鉄仮面女史の微笑みと涙
「へえ。皆川がそんなことを」
「私の転勤、イギリス支社を立て直すためらしいの。あまり業績が良くないのは知ってたけど、だからって私にそんな事出来るとは思わない。でも部長は『君なら出来ると思う。君が行くだけでもイギリス支社は上向きになるだろうけど、君が本気を出せば1年ぐらいで結果が出ると思う』って」
「そりゃ、期待されてるな」


ハハッと笑う透吾を軽く睨む


「笑い事じゃないよ」
「でも皆川もハッタリだけでそんな事言わないだろ」
「そうだけど……」
「本気、出さないのか?」


真剣な眼差しに俯いた


「私は、そんな出来る人間じゃない」


そう言って下唇を噛んだ
透吾がため息をつくのが分かる
しばらくすると、優しく抱き締められた


「あまり考え過ぎるな。海青が行っただけで上向きになるんだったら無理しなくても大丈夫だろ」
「でも、頑張れば1年で帰って来られるかもしれない……」
「何年かかってもいいじゃないか。海青が1人で頑張って無理する方が俺は心配だ」
「でも……」
「いいから、気楽に行って来い」


そう行って背中をポンポンとする透吾にバレないように、また下唇を噛んだ
喉まで出かかっている言葉を飲み込むように
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