鉄仮面女史の微笑みと涙
「……え?」


驚いて顔を上げると優しく微笑む透吾がいた


「気付いてないと思ってたか?最近また唇噛んで何か我慢してただろ?」
「透吾……」
「まるで会ったばかりの海青見てるみたいで、俺は辛かった」
「ごめんなさい」
「謝って欲しい訳じゃない。ただ何も言ってくれないのは正直堪える。俺って頼りない旦那なのかなぁ?って、ずっと思ってた」
「そんな事ない!」
「じゃ、何を我慢してるんだ?」


透吾の真っ直ぐな視線に耐えられなくて俯いた


「……言っても仕方ない事だから」
「言って楽になる事もあるだろ?」
「言えないよ」
「俺にも言えない?」
「……」


そんな私を見て透吾がため息をつく
私は俯いたまま下唇を噛んだ
そしてイギリス行きの搭乗案内の放送が聞こえてきた
私はそれを聞いて立ち上がる


「……行かなきゃ」
「そうだな」


透吾が私の手を離す
一気に寂しさが溢れてくる


「じゃ、ここで。ありがとう。送ってくれて」
「……ああ」
「体気をつけてね」
「海青もな」
「うん。じゃ……」


そして搭乗ゲートへと歩いていく
透吾との距離が広がっていく
それだけで私はどうにかなりそうだった


「海青!」
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