鉄仮面女史の微笑みと涙
ひとしきり抱き合ったあとはもう夕方になっていた
私は夫の腕の中でまどろみ、夫は私の髪の毛をもてあそんでいた


「仕事いつからだっけ?」
「再来週の月曜日から。来週はゆっくり休んでいいって社長が言ってくれたの」
「ああそうか。今度は社長秘書だったな」
「うん。奈南美さんに困った事があったらすぐに相談してねって言われた」
「そりゃ頼もしいな」


そう今度の私の配属先は秘書室室長
つまり社長秘書をする事になる
私がいない間に皆川部長は常務に昇進し、神崎課長と相川課長は多部署の部長になっていた


「丸々一週間休みがあるんなら実家に帰ったらどうだ?お義父さんとお義母さんも海青に会いたいだろ」
「ううん。お母さん達にはまたの機会に帰るって言ってあるから」
「何で?」
「透吾と一緒に居たいから」
「え?」
「やっと透吾と一緒に居られるのに、離れたくない」
「海青……」


夫がギュッと抱きしめた


「そうだな。じゃ一緒に居よう」
「うん」


そして軽くキス


「そう言えば、新婚旅行もまだだったな」
「あ、そうだね」
「来週行くか?平日ならどっか空いてるだろ」
「透吾、仕事は?」
「なんとかなる」
「もう……」
「行きたくないのか?」
「行きたいけど……」
「じゃ2泊ぐらい近場の温泉旅館でも探しとくから行こう」
「分かった」
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