溺甘副社長にひとり占めされてます。
1メートルほど離れてから、私は改めて彼を見あげた。
名前は白濱和臣(かずおみ)。若干33歳にして、我が社の副社長であらせられるお方だ。
身長はおそらく185センチを越えている。線の細さを感じる体型に茶色がかった髪、色白な肌。
少し長めの前髪からのぞく瞳はぱっちりと大きく、ほほ笑む顔は美しさだけでなく、人懐っこい印象をも与える。
見た目が良い。背も高い。仕事もできる。地位もある。
最近はメディアにも引っ張りだこなため、知名度も高い。
にもかかわらず本人は、それらを鼻にかけたりしない。
逆に今さっきのように、副社長という立場を忘れているのではないかと思うくらい、気さくな性格である。
そんな白濱副社長に、男性社員は羨望の眼差しを向け、女性社員は骨抜きにされてしまっている。
実際、素敵な人だと思う。パーフェクトな人だとも思っている。
それは認めるけど……私は彼が苦手だ。
「白濱副社長!」
私が白濱副社長から離れたことでできた空間へと、宍戸さんが飛び込んできた。
「副社長は今日から山梨に新設されたホテルに缶詰めになるって聞いて、しばらく会えないんだなって、すごく寂しかったんです。これから発たれるんですか?」
宍戸さんは白濱副社長に身体をすり寄せながら、甘えた声でそんなことを言う。