溺甘副社長にひとり占めされてます。
余ったぶんを、部屋の隅にあるテーブルへと並べていると、足早に近づいてきた女性が私の隣に並んだ。
「会場の準備はOKみたいだね。ひとまずお疲れ、館下さん」
ショートカットでクールな印象を与える彼女は、藤田さん。彼女も秘書課だ。
お疲れさまですと頭を下げていると、準備が終わったらしい深野さんも歩み寄ってきた。
「館下さんもいるし、少し時間をもらえそうだったら、私、木下さんの様子を……あ、遥子さんの様子を見に行ってくるわね」
“木下さん”で私が首を傾げたことに気付いてくれたらしく、深野さんが言い直してくれた。
「了解。こっちはなんとかなりそうだから、木下さんのことお願いね」
言うなり、藤田さんが私の肩に手を回してきた。見た目に反し、彼女はとてもフレンドリーだ。
「でも良かった~。館下さんのおかげで今日は助かったかも」
「それを言うなら、木下さんにも感謝しなくちゃ。副社長の機嫌が直ったのはきっと、お気に入りの館下さんが持ってきてくれたからね」
「……お、お気に入りって。やめてください」
顔を強張らせていると、ふたりそろってニヤリと笑った。