溺甘副社長にひとり占めされてます。
間違えないよう気をつけながら、言われた通りに差し替えたのち、私は深野さんと共に白濱副社長の元に戻った。
差し出された彼の手に取りかえたものを乗せると、彼はにこやかにほほ笑みながらくしゃりと紙を握りしめた。
「もうすぐ会議が始まる時間なんだけどさ……もし、営業部の三宅が来たら、会議が終わるころ出直すようにって伝えて」
口元はほほ笑んでるけれど、目は笑っていない。声音も微妙に怒りが込められていて、怒り心頭だということが、私にもはっきりわかった。
「営業部の三宅ですね。分かりました。あわせて副社長がご立腹だとも伝えておきます」
明るくそう言ってきた藤田さんに対して、白濱副社長はニヤリと笑い返した。
そして彼は「あぁそうだ」と私に歩みより、口元を手でかざし、耳打ちしてくる。
「会議が終わったら、デートしよ。なにかご馳走するから、このままこっちの手伝いだけしててね」
聞き間違いかと思わず見つめ返してしまった私に、白濱副社長が内緒だよとでも言うように、自分の唇に人差し指をあてた。
唖然としている私を残し、白濱副社長はプロジェクターの調整を続けている男性社員の元へと進んでいく。