溺甘副社長にひとり占めされてます。
「ねぇ。今のなに?」
「ふたりでこそこそ、見てるこっちが恥ずかしいんだけど」
白濱副社長が離れると同時に、即座に両脇から深野さんと藤田さんが肘で私を突っついてくる。
「わっ、私は何も」
からかってくるふたりを交互に押しやっていると、深野さんが思い出したように腕時計で時刻を確認した。
「準備も無事済んだし、私、少しの間ここを抜けてもいいかって、副社長に聞いてくるわ」
「了解。私と館下さんも、受付の手伝いしてから、しばらく待機することにするわね」
今後の自分の予定に、私もこくこくと頷く。
そして深野さんは言葉通り白濱副社長の元へと、私は藤田さんと共に廊下へと出た。
三階ロビーには、ちらほらと人が集まり始めていた。
幾人かで談笑するスーツの塊の中に、白濱副社長と話をしていたあの男性がいることに気が付き、思わずあっと声を発すれば、藤田さんが私を見た。
「知りあいでも?」
「いえ。知り合いではなく、先ほど白濱副社長と話しているところに割りこんでしまって、不機嫌にさせてしまった方が」
「どの人?」と問われ、ちょうど塊の中心でがははと笑っている男性だと説明する。