溺甘副社長にひとり占めされてます。
「美麗さん、僕と……、」
どうしていいのかわからなくて、身動きができなくなったその瞬間、横から伸びてきた手が、私を掴む男性の手を掴んだ。
「あぁ、武田さん。どうかされましたか?」
顔をあげれば、私の斜め後ろに、白濱副社長がいた。
武田さんの手を掴んでいるこの手も、彼のものだ。ホッとしてしまう。
肩の力を抜いた私と目を合わせた後、白濱副社長は武田さんへと顔を向け、にこりと笑った。
「彼女になにか?」
「……いえ。なにも……失礼します」
妙な迫力をまとった白濱副社長に気圧されたのだろう。
武田さんはすぐに、私から手を離し、背を向け歩き出した。
「何か変なこと言われちゃった?」
彼からすぐに問いかけられ、私は言い難さを感じつつも、素直に答えた。
「……今夜、食事にと誘われました」
「食事?……ふうん。そうなんだ……それで美麗ちゃんは、なんて答えたのかな?」
微妙に怖い白濱副社長に、苦笑いを浮かべつつ、すぐに言葉を返す。
「何も言えませんでした……言えませんでしたけど、彼と食事に行くつもりはありません。だって今夜は、白濱副社長に誘ってもらってます」