溺甘副社長にひとり占めされてます。
当たり前じゃないですかと、ふくれっ面で答えれば、白濱副社長が両腕を組んで、困ったような顔をした。
「そう言えば美麗ちゃんって、武田さんのことタイプだったんだよね? もしかして彼とお近づきになりたかったのに邪魔しないでよなんて内心思ってたりして。それならさ、俺との約束を後回しにしてもいいよ。大丈夫。俺、怒らないから……たぶん」
言われて、喫茶店での出来事を思い出す。
私はすっかり忘れていたというのに、白濱副社長はまだそんな勘違いをし続けていたらしい。
言われた時は冗談かと思った。けれどそうではなく、実は本気で言っていたのかもと、彼の表情から、そう感じてしまう。
「お近づきになりたいとは思ってません。それに私は……武田さんよりも、白濱副社長と食事がしたいです。もう少しいろいろなことを話してみたい。あなたのことを……」
あなたのことを、もっと知りたい。そう強く思っている自分がいる。
恥ずかしくて最後まで言葉にできなかったくせに、この思いが彼に伝わってしまってもいいと、そんなことを考えてしまう自分がいる。
白濱副社長は微かに目を見開いたあと、徐々にその表情を柔らかくさせていった。
にっこりと笑い、その整った顔を私に近づけてくる。