溺甘副社長にひとり占めされてます。
難しい上に答えにくい質問をされ、思わず目を閉じた。
「白濱副社長は……知れば知るほど……謎です」
軟派なタイプかと思っていたけれど、どうやらその型だけでは収まりそうもない。一筋縄ではいかなそうな人だ。
にこやかで人懐っこくて穏和だったのに、突然冷淡さをあらわにする。
心の内が見えているようで、実はまったく見せてもらっていなかったのだと知らされる。
「近いようで、ものすごく遠い。そんな感じです」
「美麗ちゃん。それってつまり、俺のこと、まだよく知らないってことだからね」
しみじみと言った私の頭に、白濱副社長が手を乗せれば、少しだけ互いの顔の距離が近くなる。
「でも、きっとすぐわかるよ。俺ね、美麗ちゃんには心を開いてるから」
綺麗な微笑みと共に、私だけに聞こえる声で、そんなことを囁きかけてきた。
会議室の方から「白濱副社長!」と呼びかけられれば、彼はゆったりとした動きで姿勢を戻した。
「じゃあ、頑張ってくるね」
その言葉を残し、彼は私から手を離し、歩き出す。
颯爽と遠ざかっていくその背中を目で追いかけた。
彼が触れた部分が熱い。鼓動も早くて、心も落ち着かない。