嘘をつく唇に優しいキスを

「理恵ちゃんかー。キャラメルは麻里奈ちゃんの分しかないけど、もちろんみんなへの土産はあるよ。心配しなくても太田さんの分もちゃんとあるから」

茶目っ気たっぷりに言う。

「あら、ホントですか?ありがとうございます。それじゃ、今日のコーヒーは私が淹れて差し上げましょう」

太田さんは上機嫌に立ち上がる。
それを見て私と北見さんは顔を見合わせて笑った。

花田社長が来ると、いつもこんな感じになり笑いに包まれる。
うちの社長と応接室に入るのを見届けた北見さんがそばに寄ってくる。

「今日はなにを持ってきてくれたんだろう」

北見さんは有名洋菓子店『ボンジェルム』の袋の中を覗き込む。
そこには箱が入っていて、早速開けて中を見ていた。

「あ、ワッフルだ!ちょうど三時だし私たちもおやつタイムにする?」

「そうですね。じゃあ、コーヒー淹れてきます」

「あれ、でも麻里奈は虫歯治療の最中じゃなかったっけ?」

「先週で終わりました。だから、全然平気です」

というか、虫歯治療中でも普通に甘いものを食べていたからね。
私の勝手な持論だけど、歯磨きさえきちんとしていたら問題はないと思う。

「そっか、なら大丈夫だね」

「はい!北見さん、ミルクいりますか?」

「今日は砂糖なしのミルクでお願い」

「了解です」

給湯室に行き、コーヒーの準備を始めた。
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