嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
目には小さな黒のビーズを使い、ヒゲの部分は黒の糸で一本一本縫われている。
不器用な私からすれば、こんなものを作れる唯香ちゃんは素直にすごいと思う。

「そうでもないよ。結構、適当に縫ってるし」

「適当に見えないよ。すごく可愛い」

私が絶賛すると、唯香ちゃんは恥ずかしそうに「ありがとう」と微笑んだ。

「これって子どもにあげるの?」

「そう。毎回、治療が終わるとシールをあげていたんだけどね。最近はいらないっていう子も増えてきて『全然いいのがない。他にはないの?』ってハッキリ言うんだよね。嬉しそうにもらってくれる子も多いんだけど」

そう言って唯香ちゃんは苦笑いした。

「全員の好みに一致するものがあればいいけど、それは難しいからね。それなら、少しでもバリエーションを増やそうかって話になったの。ユニークな消しゴムとか仕入れて、あとぬいぐるみやビーズの指輪を作ってみたら、これが女の子にすごく好評だったんだ」

「へぇ、そうなんだね。マジでさあ、私も欲しいぐらいだよ。これにチェーンをつけたらキーホルダーにできそう」

「残念だけど麻里奈にはあげれないよ。小学生までだからね」

笑いながら、唯香ちゃんは私の手からぬいぐるみをそっと取り上げた。
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