嘘をつく唇に優しいキスを

自分の席でも飲食は出来るけど、なぜか北見さんが給湯室で食べようと言い出した。
特に気にすることなくコーヒーを飲んでいると、北見さんが声をひそめて聞いてきた

「ねぇ、新庄くんと喧嘩でもした?」

「えっ?」

予想もしていなかったことに驚き、ピタリと動きを止めてしまった。

「ど、どうしてですか?」

内心焦りながらも、なんとか平静を装い聞き返す。

「最近、一緒のところを見ないから。それに話していても事務的な事ばかりだし、なんとなくぎこちない感じがするんだよね」

ワッフルを食べながら、どうなのという視線を向けてくる。

あれから私はどういう距離感で新庄くんと接したらいいか悩んでいた。

自分自身の中で片想いを終わらせたけど、多少のモヤモヤは残っていた。
告白してちゃんと振られたら、気持ち的にもリセット出来るかも知れない。
だけど同じ会社ということもあり、さすがにそんな勇気はない。

気持ちを整理したかったので、なるべくプライベートな話と言うか雑談はしないように心がけていた。
私は器用な方じゃないからこんなやり方しか出来ない。

新庄くんも必要最低限のことしか話さなくなって、お互いに違和感は持ちながらも“同期”として接している感じだった。

私の態度は人に指摘されるぐらいあからさま過ぎたのかな。
今後は気をつけなきゃ。
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