お願い!嫌にならないで
誓いを交わした後、また明るい雰囲気へと直ぐに戻り、談笑していた。
時間も忘れて、話に夢中になっていると、山本くんがふと時計を見る。
「お、もう23時回ってるんすね」
「あ、本当だ」
「辻さん、遅くまですみません」
「いえいえ。俺は良いんですけど、終電、大丈夫ですか?」
俺が尋ねると、中谷さんの方が慌てて、スマホで時刻表を調べる。
「最終は日付越えても、有ると言えば有りますけど……今から片付けて、駅まで歩き出さないと、ドタバタになっちゃいますね」
「じゃあ、そろそろお開きにしますか。ん?
あれ? そういえば水野さん、さっきから全然、喋ってな──」
水野さんを見ると、テーブルに肘をついて、ぽうっとしていた。
「あ、水野さん、こうなるとまずいですね」
呟いた中谷さんが、水野さんの隣に移動し、背中を擦って様子を伺う。
「水野さーん。帰りますよ? 動けますかー?」
「んん……」
水野さんからは、力の抜けきった声が聞こえてくる。
酔っている風にも見えるが、ただ眠気と闘っているようにも見えた。
そのとき、山本くんがとんでもないことを提案する。
「水野さんをこのまま泊めてあげてくださいよ。俺らとは逆方向なんで、帰り道1人になったら危ないっすよ」
「確かに。それなら、山本さん達も──」
「や、俺たちは帰ります」
山本くんの即答に遮られ、言葉に詰まってしまった。
そんな俺を良いことに山本くんは、にやりと口角を上げる。
そして、女性陣に聞こえないように耳打ちをした。
「2人っきりの時間、楽しんだら良いじゃないっすか」
「……っ!」
思わず、顔が耳が熱くなる。