お願い!嫌にならないで
******
中谷さんと山本くんが居なくなった部屋は、まさに祭りの後の様に静まり返っていた。
ただ水野さんの寝息だけが、小さく聞こえてくる。
俺はというと、寝室から持ってきた毛布を彼女の肩に掛けた後、宴の残骸を片す。
使用済みの食器を洗い、そしてゴミ袋にトレーやらを押し込み、その口を結ぶ。
片付けにそこそこ時間を使ったと思ったが、部屋に戻っても、まだ水野さんはテーブルに突っ伏したまま、夢の中だった。
その隣に腰を下ろし、胡座をかいて、水野さんの寝顔を眺めた。
睫毛は長いし、色白だし。
──触れたい。
ずっと今日、我慢していたんだから、少しくらい良いよな?
そっと手を伸ばし、頬に触れてみる。
滑らかで、繊細な肌。
他のことなど、何も考えもせず、全神経が指先に集中していた。
頬から唇へと、滑らせる。
──キスしたい。
その柔らかい感触に、俺の顔が火照り出す。
気のせいかもしれないが、水野さんの頬も赤くなっているような。
そのとき、水野さんの眉がピクリと動いた。
その瞬間、ヒヤリとして、反射的に手を離す。
しばらく己の欲のままに触れていたことに、罪悪感を感じた。
危ない、こんなことをしていたら、中谷さんに怒られてしまう。
このまま、ここに居ると、手を出してしまいそうで怖い。
風呂に入って、一旦落ち着こう。
そうだ、それが良い。