お願い!嫌にならないで



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中谷さんと山本くんが居なくなった部屋は、まさに祭りの後の様に静まり返っていた。

ただ水野さんの寝息だけが、小さく聞こえてくる。

俺はというと、寝室から持ってきた毛布を彼女の肩に掛けた後、宴の残骸を片す。

使用済みの食器を洗い、そしてゴミ袋にトレーやらを押し込み、その口を結ぶ。

片付けにそこそこ時間を使ったと思ったが、部屋に戻っても、まだ水野さんはテーブルに突っ伏したまま、夢の中だった。

その隣に腰を下ろし、胡座をかいて、水野さんの寝顔を眺めた。

睫毛は長いし、色白だし。

──触れたい。

ずっと今日、我慢していたんだから、少しくらい良いよな?

そっと手を伸ばし、頬に触れてみる。

滑らかで、繊細な肌。

他のことなど、何も考えもせず、全神経が指先に集中していた。

頬から唇へと、滑らせる。

──キスしたい。

その柔らかい感触に、俺の顔が火照り出す。

気のせいかもしれないが、水野さんの頬も赤くなっているような。

そのとき、水野さんの眉がピクリと動いた。

その瞬間、ヒヤリとして、反射的に手を離す。

しばらく己の欲のままに触れていたことに、罪悪感を感じた。

危ない、こんなことをしていたら、中谷さんに怒られてしまう。

このまま、ここに居ると、手を出してしまいそうで怖い。

風呂に入って、一旦落ち着こう。

そうだ、それが良い。


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