お願い!嫌にならないで



そうして、風呂から上がり、寝間着に着替えているときに、上のスウェットを部屋に忘れてしまったことに気付いた。

バスタオルを首から掛け、上半身裸の状態で風呂場を出る。

水野さんが眠る部屋の扉に手を掛けて、ふと思った。

──まだ寝ているかもしれない。

そうだとしたら起こさないようにと、そっと扉を開いて、中を覗き込む。

そこには既に目を覚ました水野さんが、毛布にくるまった状態で、ちょこんと座っていた。



「びっくりした……! 起きてたんですね」



俺の部屋に2人きりだと思うと、変に意識してしまう。

何となく、気まずい。

そして、何も言わず、ずっと水野さんは俺を見ている。

いや、何だろう。

俺を見ているが、俺を見ている訳ではないような、とても妙な感じがする。

そういえば、こんなこと前にもあった。

俺の顔より、少し下を見ている。

今なら何となく分かった、水野さんが注目している部分が。

自覚をした途端に、一気に照れ臭さがやって来た。



「あの……」

「あっ、ご、ごめんなさい!」



顔を赤くしながら、水野さんは慌てて顔ごと逸らす。

そんな反応が可愛らしく思えて、もう少し構いたくなる。



「ちょっとー、どこ見てるんですか、水野さん?」



俺が弄ると、更に顔を赤らめた。

何かしらを返してくるのを待ちながら、じっと見つめる。

その間、何度も目が合う。

かなり困っている。

しばらく視線で煽っていると、とうとう水野さんが観念したようで、顔を毛布で覆い隠しながら言った。



「良い体、してますね……」



くぐもった声が聞こえ、毛布の隙間からこちらを覗く。

そんな風に言われると、さすがに照れる。
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