お願い!嫌にならないで
「体型は出来るだけキープしたくて、ちょいちょい鍛えたりはしてます」
これは見栄を張っている訳ではなくて、本当に筋トレやジョギングを無理なく出来る程度でやっている。
それだけだ。
「まぁ、その程度なので、本当に大したものではないんですけど」
「ううん……素敵、だと思います」
現状維持の為に、自己満足でしてきたことを褒められると、素直に嬉しい。
とは言え、あんまり、まじまじ見られると照れる。
2人して、顔を真っ赤にして顔を見合わせたら、水野さんが先に目を逸らす。
「と、とりあえず、服を着てください。風邪、引いちゃいます」
「はい。水野さんは酔いが覚めたら、お風呂どうぞ」
「え! そんな悪いので、私帰りま──」
水野さんは言いながら、短針が2と3の間を指す時計を見て、表情が凍りつく。
「嘘……」
「もう電車も無いんで、泊まっていってください」
「良いんですか? と言うか……そういえば、あの2人は?」
「終電が無くなるって言って、11時過ぎには帰りました」
「私、それに気付かないくらい、寝ちゃったんですね」
水野さんは、両頬を押さえながら項垂れる。
「仕事終わりで疲れてますし、仕様が無いですよ。それに中谷さん、水野さんを起こそうと声を掛けてましたが、あの時間に帰っても、最終的に水野さん1人になって危険なので、というみんなの判断です。という訳で……」
奥の部屋から自分が着るスウェットのトップスと、そして、バスタオルと上下セットのスウェットを持ってきて、水野さんへ差し出した。
「よければ、これ。使ってください」
すると、水野さんはいつも通り躊躇う。
しかし、いつもと違ったのは一瞬で折れて、それを受け取ったこと。
「ありがとうございます……お借りします」