お願い!嫌にならないで



「へ……?」



頬が赤く、間の抜けた顔は、あまりにも無防備で堪らなくなる。

ぐっと迫って、押し付けるように唇を寄せたら、欲が溢れだして止まれない。

酔いなら、とっくに覚めている。

それなのに、顔が体が熱くて朦朧としてきた。

意識せずとも、どちらともなく深くなり、頭から火傷していくようだ。

やっと顔を離すと、涙目になった水野さんが俺を見上げる。



「──っ、もう……」



吐息混じりに訴える彼女に、また沸き上がる欲を押し込めた。



「いや、なんか、水野さんが可愛すぎて、我慢出来なくなっちゃって」



普段の俺なら冗談めかして言えるはずのことも、今だけは思考回路が鈍くなって、いつも以上に真面目な顔でバカ正直になってしまう。

本当は顔から火が噴き出しそうな程、恥ずかしいのに。

そして、俺がこんな事を言うと、もう分かりきったパターンだ。

水野さんは赤くなって、手のひらで顔を仰ぎ、焦る。



「な、何言って……」

「さて……と、そろそろ寝ましょうか」



そう言って、水野さんのその反応を楽しみつつ、ドライヤーを片付けながら立ち上がるが、彼女はその場を立とうとしない。



「あれ? 水野さん? 寝室、案内します」

「い、いいい、いえ! 私、ここで大丈夫です!」

「ここ?」

「毛布もお借りしてますし。ここで大丈夫! 本当に大丈夫!」



これ以上、話し続けると、今にも片言になってしまいそうな水野さんの前にしゃがみ、視線の高さを合わせる。



「水野さん。さすがにここはカーペット1枚で、下が硬いので、体痛めますよ。そもそも、女性をこんな所に寝かせられません」

「雑魚寝でも、私は……」

「いやいや、俺が良くない!」



先程のことがあって、身構えているのか頑なな水野さんが再び発動する。

いや、まあ、俺にその気が無い訳では、もちろん無い。

だけど、水野さんが嫌がるなら、そこはちゃんと抑えられる。
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