お願い!嫌にならないで
照れ隠しも、誤魔化しも効かなくなってきた。
「ああ、そういうこと……」
「変態ですよね。すみません」
「いやいやいや……」
嬉しいことは伝えないと、また勘違いさせて傷付けたら、それはそれは辛い。
とにかく内なる自分自身を落ち着かせて、両手を広げる。
「どうぞ。是非お願いします」
水野さんは目を少し開くと、おずおずと俺に寄り、確かめるように背中に手を回す。
俺のどこかの奥底で、蠢く衝動に見て見ぬふりをした。
俺からも、華奢な彼女を包み込む。
何だろう、可愛い。
幸せそうに、俺の胸に頬を擦り付けている。
こんな風に甘える水野さんは、全く想像したこともなかった。
可愛い。
しつこいと思われようが、それ以外何とも思えない。
「あのー……水野さん」
「はい?」
「ハグだけで、良いんですか?」
欲深く、意地悪く尋ねてみると、水野さんは動きを1度止めた。
表情を確かめたくて、彼女の髪を耳に掛けようとすると、俺の胸に更に顔を埋める。
返事が無い、困った。
「とりあえず、このままベッド行きましょう。今日も仕事終わりの飲み会で、疲れてるでしょうし」
「…………はい」
かなりの間をあけて、返事がきた。
それに苦笑いをして、水野さんを立ち上がらせる。
しかし、未だに体を強張らせている。
いつまででもそんなだと、いい加減肩が凝って、余計に疲れてしまうだろうと、彼女の腕を引き寄せ、頬に軽くキスをした。
小さく悲鳴を上げた水野さんが可笑しくて、つい笑ってしまった。
そうすれば、水野さんも恥ずかしそうに顔を手で覆う。
「もっとリラックスしてください」
「んんん、無理です……」
顔を覆って、銅像の様に動かない水野さんの背中を力加減を気にしながら押し、リビングを後にした。