あのとき離した手を、また繋いで。


髪の毛を夏希が撫でる。温かい。優しい手つき。


愛しいさが伝わる。
想われているのがわかる。


とてつもなく狂おしいほどに、胸がいっぱいになる。だけどどこかに隙間がある。ほんのすこし。


こんなにも君でいっぱいなのに、どこか寂しいの。おかしいでしょ?


触れられる距離にいる。
想って想われて、同じ気持ちでキスをしてハグをした。


それなのに私はまだまだ足りないの。欲張り、だよね……。


夏希全部をひとりじめしたい。


そのまま静かな屋上前入り口の踊り場でふたり手を繋いだまま腰をおろして、密着したまま朝のホームルームが終わるまでの時間を過ごした。


終始無言だったけど、ふたりきりの世界にいられたみたいで幸せだった。


だけどやっぱり触れられるだけじゃ足りない。

夏希のなかに私が溶け込めたらいいのにって、そう思う。一心同体になりたい。


君のなかにいて、眠りたい。
一瞬たりとも離れたくない。


夏希と離れたら、私、死んじゃうんじゃないかな……。


なんて、行き過ぎたことまで考えてしまう。
それぐらい、夏希のことが好きだ。


涙なんて、簡単にでてきちゃうほど。



***



夏休みになってすぐに訪れた夏希の誕生日をふたりで過ごした。
プレゼントを渡して、インスタで人気のレストランを調べてふたりで行った。


花火大会にも浴衣を着て、水無瀬くんと清水さんと4人で行った。
あの一件のあとも、変わらずふたりは私と接してくれた。


清水さんは『大丈夫?』と、優しく声をかけてくれたし、水無瀬くんは『俺のせいでごめん』と謝られた。


水無瀬くんはなにも悪くないのに。


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