あのとき離した手を、また繋いで。


「めぐるとのことを怒ってるの?」

「ちがうよ」



そうだよ。でもね、夏希。いま図星をつくのは、間違ってる。
それ、火に油を注いでいるってことに早く気づいて。



「めぐるとは家が近いから色々お世話になってる。母親が夜勤のときとか、たまに夜メシ作ってくれたりするんだ」



聞きたくない。そんなこと。

だってその言い訳ってつまり"だから怒らないでほしい"ってことでしょう?


しかも色々ってなに、色々って。


無理だよ。理解するなんて。容認するなんて。


私、心が小さいの。
夏希は、私だけの夏希でいてほしいの。


黙っていると「モナ?」と優しく名前を呼ばれて泣きそうになる。
こんなワガママな想いを抱いていても、夏希は夏希のままで優しい。


自分だけがものすごく夏希のことが好きみたい。



「モナ?」

「うるっさいなぁ!わかったって!好きにすればいいじゃん!」

「……っ……」

「大好きなめぐるちゃんと一緒にいたらいいよ」



勝手な言葉と涙が一緒に意図せず流れた。
頭のどこかの線が切れた音がした。
驚いたように教室中がシーンと静まり返る。


……夏希はなにも知らない。


私が夏希と付き合ってからの時間、どれだけ彼女に嫌がらせされていたか。
楽しかった夏休みが終わって、初めての登校で"幼なじみ"の強みを見せつけられた私の気持ち。


全然わかってない。


一度溢れた憤りは、とどまることを知らない。



「モナ、落ち着こう。こっちおいで」

「触んないで……!」



掴まれた腕を勢いよくふりほどく。
そのまま夏希のことを睨んで、教室から出た。

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