あのとき離した手を、また繋いで。
夏希が上手に黒木さんの身体を抱えて、立ち上がる。水無瀬くんに目配せをして、私を一度見た。
そしてなにも言わないまま、黒木さんを連れて行ってしまった。
その場に膝から崩れ落ちるように座り込もうとしたとき、水無瀬くんが支えてくれた。
「大丈夫か?」
「うん、ごめん……」
ねぇ、夏希。
私がいま感じたこと、きっと間違いであってほしいんだけど。
私たち、これからもずっと一緒にいられるよね……?
***
《夏希side》
無事に保健室までめぐるを運ぶことができた。
ベッドに寝かせたときにはもうめぐるの呼吸は安定していた。
「先生呼んでくるから」
「待って夏希、行かないで」
引きとめられて、昨日まったく同じことをモナにされたなとふと思った。
俺はめぐるの言う通りにして、そばにあったパイプ椅子に腰をおろす。
「頭、撫でて……」
「ん……」
おでこあたりに触れて撫でると、めぐるは笑顔になった。
めぐるは可愛いもうひとりの妹みたいなものだ。
昔から病弱で、泣き虫で、甘えんぼうだった。
「大丈夫か……?」
「……あのね、夏希」
「ん?」
「私ね、あと3年しか生きられないんだって」
……え?
突拍子のない告白に、思考と身体の動きが停止する。
現実味のない、まるで嘘のようだ。
「この前病院の先生にそう言われたの」
「うそ、だろ……?」
「ううん、ほんとだよ。心臓が悪いの、夏希も知ってるでしょ?」
知ってる、けど。だけど、そんな。
あと3年しか生きられないなんて……。
そんなこと、信じられるわけないだろ。