あのとき離した手を、また繋いで。
目眩がする。いま目の前にいる幼なじみが3年後にはいないなんて。
やっぱり想像しても、しきれない。
「私ね、夏希のことが好きなの」
「え?」
「私の一生のお願いを、聞いてほしい」
……なぁ、モナ、俺さ。
なんの疑いもなく、お前との未来を想像してた。
好きで、好きで、好きで。
ようやく届いた俺の片想いだった。
ぜってぇ幸せにするし、ずっと好きでいる自信しかなかったんだ。
本気だった。
モナへの想いは確かに俺の心のど真ん中にある。
消えない。消えるわけない。消せるわけ、ない。
こんな色濃くて、ぎゅっとつまったもの。
……でもごめん、俺。
「私のこと、好きになって……?」
選べない。こんな俺のこと、きっとモナは呆れて嫌いになってしまうかもしれない。
小さい頃からずっと一緒に育ってきた病気の幼なじみと、
俺が初めて恋に落ちて、好きになって、永遠を夢見た女の子。
「そばにいてほしい……」
天秤にかけても、推し量れない。
迷わずに君しかいないと、言える俺じゃなくてごめん。
「時間をくれないか……」
***
《モナside》
泣かなかったことを、どうか褒めてほしい。
水無瀬くんに身体を支えられていた私だが、どうにか自力で教室まで戻ってくることができた。
夏希は結局ホームルームが終わっても戻って来なかった。
いつまでも帰ってこない夏希に痺れを切らしていたとき、1限目の始まりを知らせるチャイムが鳴るのと同時に夏希は教室に戻ってきた。
「夏希……っ」
声をかけたけど、夏希は薄っすらと笑みを浮かべただけで、そのあとはいつも通りに机に突っ伏してしまった。
その行為がなんだか冷たく感じて奇妙な焦りを感じる。