あのとき離した手を、また繋いで。
1限目が終わって、夏希に話しかけようとしたら「ごめんトイレ」と逃げられた。
避けられているの?それとも偶然?
2限目も、3限目も、同じように理由をつけられては、話をさせてくれなかった。
トイレに行ったり、ほかの友だちのところへ行ったり。
どうして?
私、嫌われたの……?
悲しくなって、泣きそうになっても、我慢した。
涙を流してしまえば、またさらに夏希の存在が遠ざかってしまう気がしたからだ。
昼休みになった。いつも夏希とごはんを食べていたから今日はどうするんだろう?と隣の様子を伺っていると、夏希は水無瀬くんのほうに行って「メシ食おう」と誘っているのが見えた。
それに気づいた清水さんが「今日は私と食べよ」と言ってくれた。
黙ってうなずくと私の前の席の子が学食に食べに行くと言うので清水さんがそこに座った。向かい合わせになる。
「なにかあったの?」
清水さんの問いになんと答えていいのかわからなかった。
なにもかもがありすぎて、なにから言えばいいのかわからないのだ。
「ふたり、うまくいってると思ってたんだけどな」
清水さんが微かに口角をもちあげて、複雑な表情を浮かべながらそう言った。
まるで、もううまくいっていないみたいだな。
なんて、母のお手製お弁当を広げながら意識の遠くでぼんやりと考えた。
「まあ、そんなこともあるよ。すぐ仲直りできるって」
「ありがとう」
励ましてくれる清水さんに笑いかけた。
すると不服そうに唇を尖らせたあと「そういえばさぁ」と口を開く。
「モナちゃん、笑いかた変わったよね」
「え?」
そう、かな?
自分じゃ、よくわからない……。
「前は全然笑わなかったけど、笑うときは本当に可愛い顔で笑ってた。でもいまはよく笑うようになったけど、辛そう」