愛し紅蓮の瞳
「そうでしたか。……双葉様がお倒れになったこと、蘭殿はお喜びになられているんじゃありませんか?」

「……は?それ、どういう意味ですか」

「双葉様がお倒れとあれば、涼音と蘭殿の妃争いも一時休戦となる。……蘭殿は、勝ち目のない戦いにハラハラすることも減りましょう?」

フッと人を馬鹿にしたような笑みを零して、少しだけ近づいてくる涼音さんに、ふつふつと怒りが込み上げてくる。

黙っていれば綺麗で、見るからに育ちのいいお嬢様って感じだけど。


姫蓮ちゃんの言うように、性格に難がありすぎる。


「確かに、私なんかじゃ勝ち目があるとは思ってません。だけど、黙って負けてやるつもりだって、これっぽっちもありませんから」


勢い任せにまくし立てれば、涼音さんからそれまでの作り笑いがスーッと消えた。

ゾクッと鳥肌にも近い寒気が全身を襲って、身震いする。


「……つまりそれは、涼音と紅蓮様の恋路を邪魔すると言うことか?」

「え?」

「紫黒の巫女だと騒がれているが、所詮そのようなものは迷信。

そんな迷信でこの勝負に巻き込まれて可哀想だと想っていたが……、まさか蘭殿も紅蓮様に気があるのかと聞いているのだ」

「そ、それは……」



"ない"とキッパリ言ってしまえばいいのに、私……何をこんなにも迷っているんだろう。
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