愛し紅蓮の瞳
紅蓮を好きか、好きじゃないか。

……たったそれだけの質問に、なんでこんなにも戸惑っているんだろう。


「……まぁ、良い。今は双葉様の大変な時だ。ここはひとつ協力しないか?」


煮え切らない私に、涼音さんは少しだけ声のトーンを和らげて話す。


「協力って?私に何かできることが」

「ある。むしろ、今この屋敷の中で蘭殿以外には不可能なことだ」

「私以外には不可能……?」

「この、屋敷から南へ少し下ったところにある森の中に、珍しい紅い花が咲いている場所がある。その紅い花を一輪つんで来て欲しいのだ。煎じて飲ませれば双葉様は助かる」


紅い花……?

それを飲ませれば双葉様は助かる。そんな便利な花があったなんて。でも、待って?


「なんで私以外には不可能なんですか?」

「男達は皆、留守にしている。残っている睡蓮様は幼い頃から身体が弱い御方」

「……睡蓮様は身体が弱いんですか?」

「知らなかったのか?……本当ならば長男である睡蓮様に鬼を憑依させるはずだったが、睡蓮様の身体が弱いことを理由に、次男の紅蓮様に憑依させた。

こんなことも知らずに、紅蓮様の妃になろうと?」

「……っ」


何も言い返せない。


だって本当に私は紅蓮のことを何も知らない。
知ろうとしていなかった。
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