王族の婚姻をなんだと思っていますか!
返ってきたのは、軽い返事だ。

ドアが開いて、目の前にいたのはルドさん。

「え。あれ~? 侯爵令嬢。いかがなさいましたか? 王妃殿下とお茶会じゃなかったんですか?」

「少し、殿下にご用事ができまして」

緊張して硬い顔の私と、両脇の近衛兵たちの穏やかな笑顔を見比べて、ルドさんは私を執務室に通してくれた。

直接、執務室に繋がっているわけではないらしい。

前室のような小部屋があって、部屋の中は暖かい。視線を向けると、片隅に暖炉があり、炎がゆらゆらと燃えている。

気を取り直して正面を見ると、通路の両脇に本棚がふたつ、ぎっしりと分厚い本が天井高くまで積み上がっていた。

「ノーラ?」

奥の方から声がしたので向かうと、大きくて重厚そうなデスクに、書類らしき紙の束を片手にしたウォル殿下が座っていた。

「机に座るのはお行儀悪いです」

思わず小言を言ったら、驚いたような表情をしていた彼は、小さく吹き出してから書類をデスクに置いて立ち上がる。

「ちょうど休憩をしようと思っていましたから。君は義姉とお茶をしていたのではないのですか?」

「ええ。ですけれど、ウォル殿下にご用事ができたのですわ」

彼は片方の眉を器用に上げて、傍らのソファーを片手で示した。

ローテーブルを挟んで、ひとり掛けのソファーが向かい合わせにふたつ。

その片方にウォル殿下が座ったので、倣って私も向かい側に座る。
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