私の恋した誘拐犯【完】
「…ちーちゃんのお父さんに…頼まれたんだよ」



「…え……?」



「金をやるから……千織を……っ連れてってくれって……っ」



時が止まったように感じるとは、このことだろうか。



全ての音を遮断した耳に聞こえるものはない。



自分の目が何を捉えていたのかも定かではなかった。



自分の手が



足が



何に触れていたかさえ、このときの私は感じることができていない。
< 455 / 530 >

この作品をシェア

pagetop