【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…
「あんまり後ろは気にすんな」
「…はい」
何も話さないのは不自然だと言うので他愛もない話をした。
テンションも表情も私の知らないセンセ。
それでもその話術で気付かないうちにセンセとの話に夢中になっていた。
「家まで…ありがとうございました」
「あの子、大分気にしてるな。
今日だけじゃ諦めそうにないぞ」
そんな…じゃあどうしたらいいの?
「日曜、空いてるか?」
「え?はい。空いてますけど…」
小さな声でやり取りをする。
視界の端には創くんがいる。
「なら日曜デートしようか」
急に大きな声を出すから心臓が止まりそうになる。
「あいつにも聞かせといた方がいいだろ」
「そういう…」
「あと、俺の連絡先も渡しとくから何かあったら言えな?」
「あ、ありがとうございます…」
どうしよう、センセが親切すぎて…嬉しい。
「俺はこれで。じゃあな!」
「ばいばい」
"彼氏に家まで送ってもらった彼女"を演じてドアを開ける。
なんだなんだ…私が思ってた人と全然違った。
あんなに他人思いで優しい人なんじゃん!
「ふふ、センセの連絡先」
もらった紙を胸に当てると顔がニヤけてくる。
あれ、私なんでこんなに嬉しいんだろう…
「京香、おかえり。ご飯できるよ~」
私のそんな思考はお母さんの声によってかき消された。