また内緒の話









しばらくは目的もなしにただ歩いていた





一言も会話をせずにひたすら歩く





そして自然と向かった場所は駅だった




「もう帰るか?」


「……うん」




デートの気分じゃなくなってしまった





でも俺は来那に言いたい事がたくさんあった




だから今帰るわけにはいかない




「ちょっと行きたいところがあるから付いて来てもらえるかな?」



「どこに行くの?」



「来那っぽいところ」


「なにそれ?」





俺は理由になってないところに行く





その場所は




「海に行こう」




冬だけど海に行きたかった





都内で1番近い海に行く




俺もなんだかんだで来那を振り回してる事が多いけど



今日は俺に付いてきてほしかった




海に着くと




「ねえーりつーなんで海なのー?」




ここの海は自由に入れるみたいだ



なので砂浜とか歩いてても何も言われない



「いいからこっちこっち」


「寒いよーー」




来那の手をギュッと握り





「この辺で座るか」



と言ってその場でしゃがむ





目の前には海




「来那が寒くなると思って貼るカイロ買って来たぞー
しかも4つも買って来たからこれ貼って寒さ凌いでみて」



来那の背中に二つとお腹に二つ貼ってあげた




「ありがと笑」


来那は笑ってくれる






そっと和んだところだった





「りつごめん、
私、覚えてないけど最低な事してた」



来那は声を震わせて俺に言う




でも俺はそんな来那に優しく言った




「来那は悪くない、悪いのはあいつだ
来那が言ってくれた通り今は俺で記憶がいっぱいなんだろ?
忘れていい記憶だよ」



「……うん」





「来那は今、何が不安なの?」



「何って、全部不安だよ」





来那がそう言った時



病院で言われた一言をまた思い出す



『私の気持ちなんてわからないよね』










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