また内緒の話
病院の外に出ると
「離して!」
来那が俺の腕を振り払う
「来那、俺の話聞いてくれ」
「………」
来那はまだ目に涙が溜まる
そんな弱そうな来那を助けるのが俺で居たい
「来那と約束したの覚えてる?」
「………約束?」
やはり来那は忘れていた
でもいいんだ
来那との思い出は俺がいくらでも話してあげられるから
「来那が言ったんだよ」
“りつがいてくれれば幸せだよ
もしそうなってもずっと一緒に居てくれればいいよ
理由とか、言葉はいらない
ただ一緒に居てくれるだけでいいの”
付き合って半年の頃に来那に言われた言葉だった
来那にその事を話すと
「………私そんな事言ったんだ」
来那は俯きながら言う
「でも、実際そうなったらほんとに悲しい
りつのこと忘れたくないよ」
来那は泣きながら俺に抱きつき言う
それでも俺は来那じゃないとダメだった
「俺がずっと一緒にいるよ」
来那を強く抱きしめて言う
「………りつ」
「俺が来那のそばにいる
だから今からでもいい
また俺と来那で、思い出を作り直そう?
俺の顔を忘れても、またいっぱい写真撮ってこいつが律なんだなって思い返してよ」
俺の思いを来那にぶつける
すると来那は
「………うん…
りつが居てくれてよかった」
と泣きながらまた俺を強く抱きしめた
これでいいんだ
来那の記憶が無くなっても
俺は来那を大切にするんだ