溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「婚約者さん、迎えに参りました」


彼はそう言いながら私に手のひらを見せる。
もしかして、握れということ?

だけど、婚約者じゃないし!


「大成さん、私、自分の家に帰ります」


今日は鍵もちゃんとある。


「うん。それじゃ荷物取りに行こう」

「そうじゃなくて!」


私がアタフタしていると、彼は左手で私の手をつかみ、自分の右手を握らせる。


「澪と一緒にいると、楽しいんだ」


そして声のトーンを抑え、私の目をまっすぐに見つめて囁くので、不覚にも胸が高鳴ってしまう。


「な?」


『な?』なんて甘えたような声で言われて、思わずうなずいてしまった。
あぁ、完全に大成さんのペースに巻き込まれてる……。

皮張りの車のシートは、実に乗り心地がいい。
けれど、緊張もしてしまう。


「あの、婚約者のフリはしますから、一緒に住むのはどうかと……」

「澪って好きな人いるの?」

「いえ……」


残念ながら仕事一筋だ。


「それじゃ、俺を好きになれば?」
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