溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
逃げようとしたのに、彼にスッと腰を抱かれできなくなってしまった。


「もうちょっと、このまま」


大成さんは再び私の肩に頭を預けて、目を閉じてしまう。

本当の恋人のような行為に頬が真っ赤に染まってしまうけど、スイートで初めて出会ったときの刺々しさがなくなってきたのはうれしい限りだ。
それから五分ほどしてやっと目を開いた彼は「もうひとついい?」と甘え声。


「な、なんでしょう?」


とんでもない要求をされるのではないかと身構えたものの、彼は私を立たせてピアノに誘導した。


「また聞かせて。あの曲」

「あっ、カノン?」

「うん。すごくいい曲だった」


それくらいはお安い御用だ。
私は鍵盤に指を置き、カノンを奏で始めた。

あぁ、気持ちいい。
こうしてピアノを買ってもらうまで、もう何年も弾いていなかったのに、指が覚えている。

もちろん、毎日練習を積んでいた頃に比べたら、ミスタッチもあるし腕は落ちている。
けれど、あの頃と変わらない胸の高鳴りを感じる。
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