溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
きっと彼は、弱音を吐くことすら許されない立場なのだろう。
でも、わかってもらえたみたいでよかった。


「ピアノを、君に買ってあげよう」

「な、なにをおっしゃっているんです? そんな必要ありません」


突然の申し出に目を丸くしていると、彼は続ける。


「その代わり、力を貸してくれないか?」


どういうこと?


「時間がないんだ。なにも言わず、今はついてきてくれないか?」

「えっ、あのっ……」


彼は「顔を洗ってくる」と洗面所に行ってしまう。
私はなにがなんだかわからないまま、呆然と立ち尽くしていた。


「待たせたね」


顔を洗って酔いをさまそうとしたのかもしれない。
シャキッとした彼は、私の手を引き部屋を飛び出す。

私は混乱したままあとに続いた。
でも、彼が息を吹き返したかのように見えて、ちょっとうれしかった。
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