溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
チーフがすでに来ているのに気がついた彼は、小さく頭を下げ私のうしろに並ぶ。
まだ整わない息遣いが私まで聞こえる。

とりあえず今日の持ち場を聞いた私は、大成さんを伴って移動を始め、ふたりでエレベーターに乗った。


「八坂さん、寝てないんでしょ?」

「まあ、な。でも間に合ってよかった」

「休んでください。なんとかしますから」


彼の顔が心なしか青白い。無理してほしくない。


「サンキュ。だけど大丈夫だ。仕事に穴はあけられないだろ」


今日は満室に近い。
ひとり欠けると痛手はあるけれど、百花に手伝ってもらえばなんとかなりそうだ。


「でも……」

「少しは無理が必要なときもある。帰ったら優しくしてくれよな」


私を茶化す大成さんは、ワゴンを押してエレベーターを降りた。

もちろん、優しくする。
私にはそれくらいしかできないもの。


「仕事、うまくいったんですか?」

「あぁ、一応丸く収まりそうだ。さて、どこからいく?」
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