溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
動けなくなりしばらくそのままじっと見ていると「澪」と百花に呼ばれてハッとした。
その声に気づいた大成さんが振り向いてしまったのだ。


彼は目を真ん丸にして、私をじっと見つめる。
けれども私はすぐに目を逸らした。

彼と一緒に振り向いた女性が、千代子さんだったからだ。

どう、して……。


「澪……」


大成さんが私の名を口にしたのがわかったけれど、私は走り出した。


「澪!」


うしろで大成さんがもう一度私を呼んだのがわかったが、私は振り向くことなくその場を離れた。
そして更衣室に駆け込み、着替えを済ませ、すぐにアルカンシエルを飛び出す。

大成さんから離れたい。顔も見たくない。
まさか、千代子さんとまだ関係があったなんて……。

あのパーティのとき、彼女の素行の悪さを暴露され、縁談はなくなったはずだった。
それなのに、どうして?


私はマンションに帰ると、すぐにピアノを弾きだした。
心を落ち着ける術を他に知らない。
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