溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「聞こえなくてもわかるよ。澪の指を見ていればね」

「まさか……」


ピアノは弾いたことすらないと言っていた彼が、見ているだけでミスタッチに気づくわけがない。
でも、そう言ってくれる彼の優しさに、なにかがこみ上げてきて泣きそうになる。

それはおそらく、会いたくてたまらなかった彼が目の前にいるからだ。


「澪」


大成さんは目を細め私を見つめたあと、強く抱きしめてくれる。


「会いたかった」


そしてため息交じりに吐き出した彼の声が耳に届いた瞬間、うれしさのあまり彼にしがみついてしまった。


「中野さんに聞いた。千代子さんが澪を傷つけたって……」


彼はそう言いながら私の背中に回した手に力を込める。


「ううん。平気です」


彼の腕の中で首を振ると、「強がらないで」と返され、息を呑む。

たしかに強がりだった。
千代子さんに呼び出されたとき、サラッと受け流すフリはしたけど胸が痛くてたまらなかった。

だけど……。
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