溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
それはボイラー室で聞いた。
私がうなずくと彼は淡々と続ける。


「俺、さっきまでフランスにいたんだ」

「はい、中野さんから聞きました」


突然なに?


「フランスの老舗ホテルとの提携の件、前に話したよね」

「はい」

「そのためにはまとまった資金が必要で……アメリカのホテル買収の一件で、資産が目減りしている今のアルカンシエルには、融資なしでは難しい話だったんだ」


だから東横銀行とも話が進んでいたんだ。


「東横銀行がそれをすべて出すと言ってきた。その代わり、千代子さんとの縁談を考え直せと。でも俺は、大切な澪をビジネスの犠牲になんてするつもりはない。それで、フランスに急遽飛んだ」


そう言う彼は、うっすらと笑みを浮かべている。


「それで?」

「千代子さんにも、頭取にも見くびられたものだ。アルカンシエルの魅力についてきちんとプレゼンをして、あちらから提携したいと言わせることができた」


彼の言葉に目を見開く。
中野さんの口ぶりでは難しい交渉のようだったのに。
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