溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
私はなんと言ったらいいのかわからず、曖昧に笑ってごまかした。


「西條さん! ちょっと、玉の輿じゃない!」


そのあとも、他の仲間たちになかばもみくちゃにされてしまった。
でも、皆が祝福してくれているのが伝わってきて、白い歯がこぼれた。


父のことももしかしたら耳にしているかもしれない。
だけど誰ひとりとしてそのことについて触れることはなく、仲間の優しさを感じた。


「澪ー」


そして百花も。
私の顔を見るなり抱きついてきた彼女は、「ピアノ、すごかったんだって?」とつぶやく。


「すごくなんて……」


きっと彼氏に聞いたのだろう。


「今度聞かせてよ」

「うん。聞いてくれるならいつでも」


ピアニストにはなれなかったけれど、私の演奏を聞きたいと言ってくれる人がいるのは、幸せだ。


「ねぇ、八坂さんと結婚するんでしょ?」

「それは、えっと……」


彼が私との未来を見てくれているのも伝わってくるものの、正式にプロポーズされたわけではない。
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