溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
毎日エアピアノは弾いている。
とはいえ、実際に鍵盤を叩くのとはまったく違う。


「ここにピアノを買おう。防音もしっかりしてるから問題ない」

「なに言ってるんですか! ピアノって高いんですよ?」


そんなこと、知ってるか……。


「俺が聞きたいんだ」

「ですから、ド素人ですって。どこかのコンサートに行かれればいいでしょう?」


プロとして活躍している人はいくらでもいる。


「俺が聞きたいのは、澪の奏でる音だ。他の音には興味がない」


彼はそう言いながら私の手を取り、じっと見つめる。


「ちょっと荒れてる……」

「掃除をしてると、どうしても」


気をつけてハンドクリームを使っているものの、水仕事が多いのでどうしても荒れてしまう。


「澪の奏でる音なら、きっと優しい音に違いない。仕事の息抜きだと思って、俺だけに聞かせてくれればいい」


『俺だけ』なんていわれると、胸が締め付けられるように疼く。
まるで彼の特別な存在になったかのようだ。
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