遠くに眠る
次の日。僕たちのクラスは、席替えをした。
一番右の縦一列目が女子。二列目が男子。
それ以外の席での決まり事はないから、自由に席を選んでいい。
僕は、以前函南さんが座っていた席のすぐ隣に机をおいた。
なぜ、そこにしたかというと、いくら函南さんでも、同じ席には座らないだろうという僕の推測だ。
彼女の隣に座るのは、ちょっとした憧れでもあるのだけれど……。


「えっ!?」


机を引きずる音がしたものだから、誰だろうと思って顔を上げてみた。


「私が隣でごめんなさいね。」

「い、いや…」


目を見開けば、函南さんが机に手をついて座ろうとしているところだった。
「この席が、一番気に入ってるの。」
サッと机を軽く撫でると、鞄の中から本を取り出した。
そのまさかだった。
函南さんは、前と同じ席に座った。
ということは、僕の隣の席は函南さん。
これは、絶好のチャンス。
函南さんと、もしかしたら、仲良くなれるかもしれない。


「シャーペン落ちてる。」

「あ!ありがとう。」

「別に。」


函南さんは、僕を見ないまま、今朝帰ってきた数学のテストを見直していた。



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