私の上司はご近所さん
「百花ちゃん。今回は本当にありがとう」
「いいえ。私も楽しかったです」
搭乗手続きを終えた沙也加さんと、羽田空港の出発ロビーで会話を交わす。
「今度は札幌に遊びに来てね。私が案内するから」
「はい。そのときはよろしくお願いします」
今日は沙也加さんが札幌に帰る日。お台場観光を終えて羽田空港に来たのは、沙也加さんを見送るためだ。
「お兄ちゃんも元気でね」
「ああ、沙也加もな」
「うん」
仲良くなった沙也加さんとの別れはつらい。思わず涙ぐむと、沙也加さんの両手が背中に回った。
「ちょっと百花ちゃん。泣かないでよ」
「だって……」
今度はいつ会えるかわからないからといって、しんみりとした別れはしたくなかった。けれど勝手に込み上げてくる涙を止めることができない。
「百花ちゃん! 大好きよ!」
「私もです!」
私も沙也加さんの背中に両手を回す。そしてお互いギュッと力を込めると強く抱きしめ合った。すると部長が「コホン」とわざとらしい咳払いをする。
「盛り上がっているところ悪いが、沙也加。そろそろ時間だぞ」
「えっ? もうそんな時間?」
「ああ」
部長の言葉を聞いた沙也加さんは、私を抱きしめていた腕を呆気なく解き放つと「じゃあまたね!」と軽く挨拶した。