私の上司はご近所さん

ついさっきまで、私と沙也加さんは遠距離恋愛中の恋人のような熱いハグを交わしていた。それなのに沙也加さんは別れの余韻に浸る間もなく、あっさりと搭乗口に向かう。

あまりにも早く気持ちが切り替わる沙也加さんの様子がおかしくて、部長と顔を見合わせるとクスクスと笑った。

「気をつけろよ!」

「沙也加さん、元気で!」

キャリーケースをコロコロと転がす沙也加さんの後ろ姿に向かって、部長とともに声をかける。すると進めていた足を止めた沙也加さんが、私たちの方へクルリと振り返った。

「ねえ、いい加減、お互いの名前で呼び合ったら? いつまでも部長と園田さんじゃおかしいよ!」

「……っ!」

沙也加さんの唐突な指摘にうろたえてしまい、なにも言い返すことができない。そんな私の横で部長が沙也加さんに返事をした。

「そうするよ」

「うん。じゃあね」

「ああ」

部長と最後の挨拶を交わした沙也加さんは満足そうな笑みを浮かべると、搭乗口の奥に進んで行ってしまった。

毎日のように夏休みを一緒に過ごしていた沙也加さんの姿が見えなくなっただけで、急激な寂しさに見舞われる。再び込み上げてきた涙を指先でそっと拭っていると、部長の手が頭の上にのった。

「またすぐに会えるさ」

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