私の上司はご近所さん
「俺と百花がつき合い始めたことも、すでに噂になっているだろう。だからこそ商店街で人目をはばからずに手を繋いだり、ここに泊まらせるようなことはしたくないんだ」
さつき台駅から手を繋いでくれなかったのも、昨日、部長の家にお泊りさせてくれなかったのも、翔ちゃんを傷つけないようにという部長の配慮。思いやりにあふれた部長がますます好きになる。
「千秋さん、大好き」
愛しい思いを込めて彼の名を口にすると、繋いでいた手をゆるりと放つ。そして自ら、千秋さんの首に腕を回した。
「噂になるとか偉そうなことを言ったけれど……名前を呼ばれて抱きつかれたら、もう我慢できない」
「あっ……」
千秋さんの腕が私の腰に回り、その手に力がこもると、あっという間に体が傾く。そして私と彼の距離がゼロになると同時に、唇が重なり合った。
初めは優しく触れるだけのくちづけが、次第に熱を帯びていく。お互いの唇を求め、何度も角度を変えてキスを交わした。
「百花がほしい」
唇を離し、耳もとで熱くささやかれた言葉が恥ずかしい。けれど私の初めてを捧げるのは、千秋さんしかない。
「はい」
うつむきながらコクリとうなずくと、額に甘いくちづけが落とされた。