私の上司はご近所さん
「実を言うと料理はあまり得意じゃないんだ」
「えっ? そうなんですか?」
「ああ」
新築マンションの綺麗なキッチンで、ソムリエエプロン姿でキッチンに立ってパスタを作る。そんなオシャレな休日を過ごしていそうなのに、料理が得意ではないとはビックリだ。
「明日は何時頃に行けばいい?」
食堂が混雑するのは平日のお昼どき。明日は土曜日だけれど、ゆっくりしてもらうには正午前後は避けた方が無難だ。
「そうですね。午後一時すぎでもいいですか?」
「了解。楽しみにしている」
「はい」
部長と明日の約束を交わす。
「それじゃあ、ここで」
「はい。送っていただいてありがとうございました。おやすみなさい」
「おやすみ」
部長の口から出た『おやすみ』という挨拶が新鮮に感じたのは、会社では絶対に聞くことができない言葉だから。
なんとなく得した気分になりながら、自宅のマンションに帰る部長の後ろ姿を見送った。