アナタに逢いました
「うわ…」
一歩足を踏み入れるとそこは青一色の空間だった
(いや…一色じゃないな…)
同じ青でも薄い青から黒に近い青まで
様々な青色が空間に溢れていた
写真、レジン小物、編み物、フィギア、絵葉書
小さなものから壁一面の絵まで…
様々な青が飾られていた
人の名前が覚えられないのに
色の名前はよく覚えている
保育園の先生が色の名前を沢山知っていて
私はその先生が大好きで…なぜかそれは覚えられたのだ
『青にも沢山名前があるのよ?』
センセーはそんなことをよく話してくれた
『うみちゃんも好きな色を見つけてみてね』
そのセンセーは赤が好きだって言っていて
…私が小学生になった頃、とびきり赤が似合いそうなカッコいい旦那さまと結婚した
そんなことを思い返していると一枚の絵に行き合った
「あ…これ…」
どこまでも続く空に白い鳥が飛んでいる
塗られた空は薄い青、水色…
「瓶覗…」
思わず口から色の名前が出ると…
「よく知ってんね」
っ、背後から声がした
「…ん?アンタ…」
昨日鼻唄にケチをつけた男が
ニコニコとしながらそこに立っていた
「よー!きりんちゃん…だから…アンタはいや」
「ごめん、恭哉」
「うん」
なぜか恭哉の名前はすんなり口をついた
「恭哉、何してるの?こんなとこで…」
郵便局は土日休みじゃないのかな?
今日は平日なのに…
「ん?あ、コレ描いたのオレだから」
「へえ……は?え?なんで?」
「なんで?……そりゃあ絵を描くのが日課だから?」
恭哉はまあるい綺麗な目をくりくりさせながら
にかっと笑った
「村ちゃんに貰ったんでしょ?ここのチケット…
全くアイツは興味ないんだからなぁ」
恭哉はふぁぁと欠伸をすると
眠そうに床にペタんと座り壁にペタっと体をつけた
「ちょっと寝る…きりんちゃん…見終わったら起こしてよ」
「ええ?…あ、ちょっ…」
「すーすー」
(寝てる…)
よほど疲れているのか恭哉は壁にもたれて眠ってしまった
改めて瓶覗の空の絵を眺める
少しだけ濃淡がついて…薄く雲がかかり
…あぁ空なんだと気付く
吸い込まれそうな絵だった
(恭哉の声みたい)
空気に溶けた柔らかいあの声…
恭哉の作品はまだ続いていた。
少し横に目をやると今度は群青色の空の絵
星はなく月だけがぽっかりと浮かんで…
(あ…)
地上から月を見上げているのはガントリークレーン
(キリンだ…)
長い首で届かない月を見上げてるように見える
(そっからお前も届かないんだね)
私はそこから暫く動けなかった…
一歩足を踏み入れるとそこは青一色の空間だった
(いや…一色じゃないな…)
同じ青でも薄い青から黒に近い青まで
様々な青色が空間に溢れていた
写真、レジン小物、編み物、フィギア、絵葉書
小さなものから壁一面の絵まで…
様々な青が飾られていた
人の名前が覚えられないのに
色の名前はよく覚えている
保育園の先生が色の名前を沢山知っていて
私はその先生が大好きで…なぜかそれは覚えられたのだ
『青にも沢山名前があるのよ?』
センセーはそんなことをよく話してくれた
『うみちゃんも好きな色を見つけてみてね』
そのセンセーは赤が好きだって言っていて
…私が小学生になった頃、とびきり赤が似合いそうなカッコいい旦那さまと結婚した
そんなことを思い返していると一枚の絵に行き合った
「あ…これ…」
どこまでも続く空に白い鳥が飛んでいる
塗られた空は薄い青、水色…
「瓶覗…」
思わず口から色の名前が出ると…
「よく知ってんね」
っ、背後から声がした
「…ん?アンタ…」
昨日鼻唄にケチをつけた男が
ニコニコとしながらそこに立っていた
「よー!きりんちゃん…だから…アンタはいや」
「ごめん、恭哉」
「うん」
なぜか恭哉の名前はすんなり口をついた
「恭哉、何してるの?こんなとこで…」
郵便局は土日休みじゃないのかな?
今日は平日なのに…
「ん?あ、コレ描いたのオレだから」
「へえ……は?え?なんで?」
「なんで?……そりゃあ絵を描くのが日課だから?」
恭哉はまあるい綺麗な目をくりくりさせながら
にかっと笑った
「村ちゃんに貰ったんでしょ?ここのチケット…
全くアイツは興味ないんだからなぁ」
恭哉はふぁぁと欠伸をすると
眠そうに床にペタんと座り壁にペタっと体をつけた
「ちょっと寝る…きりんちゃん…見終わったら起こしてよ」
「ええ?…あ、ちょっ…」
「すーすー」
(寝てる…)
よほど疲れているのか恭哉は壁にもたれて眠ってしまった
改めて瓶覗の空の絵を眺める
少しだけ濃淡がついて…薄く雲がかかり
…あぁ空なんだと気付く
吸い込まれそうな絵だった
(恭哉の声みたい)
空気に溶けた柔らかいあの声…
恭哉の作品はまだ続いていた。
少し横に目をやると今度は群青色の空の絵
星はなく月だけがぽっかりと浮かんで…
(あ…)
地上から月を見上げているのはガントリークレーン
(キリンだ…)
長い首で届かない月を見上げてるように見える
(そっからお前も届かないんだね)
私はそこから暫く動けなかった…