PMに恋したら
「実弥は俺の彼女だよって相手にも直接宣言できるじゃん」
シバケンの言葉は頭の中のごちゃごちゃした思考を吹き飛ばす。この人は何も怖がっていないのだ。自分の環境に脅えているのは私だけだ。
「嬉しいです……」
声が震えた。父が怖くて、シバケンとの未来が不安で、だからこそそばにいてくれるシバケンの存在が愛しくて。
「おいで」
軽く両腕を広げて私を呼ぶシバケンに、前屈みになってゆっくり近づくと両腕で抱きしめられた。同時にシャンプーの香りが鼻をくすぐり、まるで香りが私の体まで包んだようだ。
「実弥を誰にも取られたくない」
耳元で感じる独占欲が心地良い。
「私もシバケン以外の男なんてどうでもいい。離れたくない」
シバケンの唇が私の髪にキスを落とす。
「ご両親にも挨拶して真剣だって伝えたい」
「行きたくない。挨拶なんてしなくていい。このままここに居たい……」
「挨拶には行かなきゃ。反対されたとしても、他の男と結婚されるのは困るから。俺の存在はきちんと印象付けたい」
「はい……」
私の口からだけの存在じゃない、確かに絆がある恋人なんだって両親に知ってもらわなければ。
シバケンの胸に顔をうずめた。
私もこの人が大好きで大切だから、きちんと父と母に紹介しよう。シバケンがどんなに真面目に仕事をしているのか、どれだけ私のことを大切にしてくれる人なのかを。
「どうしても反対されたら無理矢理連れ去るくらいの気持ちでいるから」
「それは誘拐ですか? 犯罪ですよお巡りさん」
いたずらっぽく言うと頭の上で微かに笑う吐息を感じる。
「合意の上ならいいの。それとも、俺に連れ去られるのは困る?」
胸にうずめた顔を上に向けた。
「いいえ、大歓迎です」
困るわけないじゃない。シバケンとならどこにだって行ける。どんなことだってできちゃうんだから。精一杯の笑顔を向けた。私の想いがどれだけ大きいか、ちゃんとシバケンに伝わればいい。
シバケンが下を向き、私と視線が絡まった。そのままゆっくりと近づいてくる顔に合わせて、私もゆっくり目を閉じた。唇が重なり、ほんの少し開いた唇の隙間からシバケンの舌が口の中に侵入する。