PMに恋したら
「なんか俺、マジで最低かも……」
着替えながら暗い声を出したシバケンに「どうして?」と問いかける。
「実弥のご両親に挨拶に行く前にセックスって……」
そう言われると私も後ろめたさを感じる。でもシバケンと体を重ねたことは後悔していない。
「最低なんかじゃないです……私は嬉しかった……」
照れてしまい小さな声で言うとシバケンも照れたように「うん……」と呟いた。
アパートから駐車場までの短い距離でも、傘では防ぎきれないほどの激しい雨が体を打つ。私はシバケンの車の助手席に乗って、勢いよく運転席に乗ってきたシバケンの髪をハンカチで軽くふいた。彼はシャワーを浴びたばかりなのに髪が濡れ、ジャケットの肩も濡れていた。
「ますます雨が酷くなったね」
「本当に。車でよかったです」
エンジンをかけジャケットの水滴を手で払うシバケンに呆れて、髪に続いて肩の水滴もハンカチで拭いてあげた。大人しく拭かれるシバケンは本当に犬のようで、髪をぐしゃぐしゃと撫で回したい衝動に駆られた。
「ありがとう」
手をどけるとシバケンは微笑み身を乗り出した。その意を察して目を閉じると、当たり前のように彼の唇を受け入れる。今日だけでもう何度キスをしたのかわからない。シャワーを浴びた後から部屋を出る前まで、彼は常に私に触れていた。
設定されたカーナビの案内通りに私の自宅まで進み、シバケンの運転は始終穏やかだった。
「シバケン、運転上手……」
思わず呟いてしまった。今まで誰かが運転する車の助手席に乗っていて、こんなにも乗り心地がいいと思ったことはない。
「そうかもね。一応毎日乗ってるし、安全運転には人一倍気をつけなきゃいけないから」