私はそんなに可哀想ですか?
「浅田、浅田帰るぞ?」

先に会計を済ませてから足元の覚束ない浅田に肩を貸して店をでる。繁華街の夜は未だ終わる気配を微塵も感じさせない。

この様子じゃ電車は無理だな。タクシーを探して辺りに目をやっていると浅田が小さく言った。

「御手洗君・・・私の名前、何?」

「何言ってんだよ、浅田千絵だろ」

「うん、私は浅田千絵、今日は浅田千絵でいたい」

薬指にはめた指輪はゆっくりと外され、バックの奥へと仕舞われた。

「ね、いいでしょ?御手洗君」


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