四面楚歌-悲運の妃-
偉罨様の言葉に戸惑い、顔が見れない。
「そんな顔をしないでくれ。困らせる為に言ったのではない。そなたを想う気持ちがあるからこそ、冥紗の気持ちが分かるという意味なのだよ。」
私にそっと近づくと、膝に置かれた私の手に偉罨様の手が重なる。
顔をあげると、偉罨様がさっきと同じ様に悲しく微笑む。
「聖人として生まれ、逃れられぬ事もある。そなたを想うからこそ、掟などに縛られず幸せに生きて欲しいのだ。自ら村を出たのならなおさらだ。」
偉罨様…。
涙が頬を伝うと、重なった手に落ちる。
偉罨様は昔から優しい方だった。
私の気持ちをいつも気遣ってくれた。
本当は聖大神として、村の掟にしたがい
村の為にも私を連れて帰らなければならないはず
もし…これが清老師様達に知られたら…
「案ずるな。今は私が長だ。誰にも何も言わせない。掟も変えてみせる。聖人を道具になどさせない。」
そう言って笑った偉罨様は、さっきと違って悲しい笑みではなく、輝く様だった。
私も笑顔で返す。
「一つだけ言わせて欲しい。私は冥紗の味方だ。辛い時はいつでも頼ってくるがよい。」