優しい魔女は嘘をつく
「頑張ろう」
今度は二人の間を、強い風が吹いた。
山の向こう側が赤く染まり、頭上には群青を薄めたような青が広がっていた。
「ね、堂本くん」
私が笑うと、堂本くんはため息を落とした。もしかして、呆れられたかな……なんて思っていたら。
「やるからには、本気でいく」
「え?」
「だから、一番前で見てろよ」
堂本くんの力強い拳が、私のものと重なった。
心臓が大きく跳ねる。堂本くんの温もりが、触れた指から、じんわりと伝わってきた。
冷えた体が、瞬時に熱を持つ。